遊戯王:コナミがカードゲームを売り続ける方法
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遊戯王が25周年を迎えたそうです。一つのコンテンツがこれほど長く続くことはとてつもないことです。原作人気もありますが、なによりコナミの営業努力の賜物だと思っています。
25年前にルールが作られたゲームをどうやってユーザーをつなぎとめ売り続けているのでしょうか。
アニメやメディアの販促効果もあるでしょうが、ここでは本質的なカードゲームとしての魅力の維持について着目します。
端的にいえば
- インフレ(強いカードを出し続ける)
- 規制(強いカードを制限しバランスを保つ)
がキモでしょう。
遊戯王ではずっとインフレと規制を繰り返して、ユーザーの関心を引き続け、カードを売り続けています。
遊戯王インフレと規制の歴史
遊戯王の歴史はインフレと規制です。
私が紙を遊んでいた10年以上前の話をします。
昔、「ヤタガラス」というカードがありました。
このカードは特殊召喚できない。①:このカードが相手に戦闘ダメージを与えた場合に発動する。次の相手ドローフェイズをスキップする。②:このカードが召喚・リバースしたターンのエンドフェイズに発動する。このカードを持ち主の手札に戻す。
当初これがものすごく強くて流行しました。案の定、あっという間に禁止カードに。
このカード強すぎ!さすがに未来永劫禁止だろうな…
なんて思ってました。
ところが2024年現在、このカードは完全に制限解除されています。修正もなく、当時の強さのままです。
気がふれたのかコナミ!?環境ぶっ壊れるぞ…!
でも実際はまったくの無風。というかデュエルで見たことすらありません。
なぜか?現役デュエリストはおわかりでしょうが、単純に弱いからです。性能が現在の環境にまったく追いついていないのです。
- 召喚権を消費する
- 先攻制圧で使えない
- 環境の高速化で、戦闘効果の価値減少
- 無効妨害カードが増えて通しにくくなった
- サーチや自己蘇生カードが増え、ドロースキップの威力が減少
総じて、インフレにより相対的な強さが低下しています。
遊戯王はずっとインフレし続けており、基本的に新しいカードほど強いです。ヤタガラスは時代に置いていかれたのです。
カードゲームを長く売り続けられる秘密はここにあります。
ユーザーの欲しがる商品=強いカード
遊戯王において、ユーザーの求める商品とはなんでしょうか?
- イラストが良いカード
- 使ってて面白いカード
- 原作のカード
- モチーフが良いカード
訴求はいろいろありますが、なによりもまずカードとしての性能の高さです。つまり強いカード。
新パックの評判も、強いカードが収録されればアタリ、そうでなければハズレと評されます。ユーザーの需要の第一が、カードの強さであることを示しています。
イラスト人気も確かに存在します。近年では、オタク向け美少女イラストのカードが露骨に増えてきています。強い需要があるのでしょう。ですが、やはり一定の強さがなければ、それほど人気はでません。性能とイラストが相まってこそ人気が出ます。
弱いカードは需要がないため、売り続けるために強いカードを刷り続けることになります。すると性能のインフレが起こります。長く売り続けるため少しずつ強くします。たまに爆発的な壊れカードを出してしまった場合は、しばらく売ってからルールで使用規制します。
壊れカードがでる理由
たまに圧倒的な性能を持つカードが登場することがあります。「壊れ」などと言われますが、これは既存カードプールとの噛み合いによって偶発的に壊れてしまう場合と、意図的に作っている場合に分かれます。
- 偶発的な壊れカード
- 意図して作った壊れカード
偶発的な壊れカードは、開発によるテストプレイ不足が原因です。昔は壊れカードの多くが低レアリティだったことがその証拠です。先述した通り、強いカードはパックの売上を伸ばすので、低レアリティにする理由がありません。開発が事前にその強さをわかっていないので、低レアに設定してしまったのです。実際、あとから実績の出たカードは、再録時にレアリティが格上げされています。
近年の壊れカードは、まず間違いなく意図的にそうデザインされています。
なぜ壊れカードを作っているのでしょうか。それは、もっとカードを売って収益を増やしたいからです。強いカードは売上を増加させると先述しました。企業側は強いカードをもっといっぱい作りたいのです。同時に、長く商品を売り続けるため、急激なインフレも避けたい。その結果、たまに壊れカードを出すというペースに落ち着いています。本当はもっともっといっぱい壊れカードを出したいはずです。
もしカードゲームのバランスが至上命題なら、こんなに頻繁に壊れカードが出たりはしません。そこはコナミも営利企業なので、利益を追求しなければカードゲーム事業を継続できません。カードバランスと利益追求の妥協点が、現在の壊れカード登場のペースといえます。
壊れカードが流行しきったら規制してバランスを再び平衡に戻す。遊戯王はこれの繰り返しです。
具体的な内容を見たいなら、遊戯王wikiの「デッキ・カードプールの変遷」を読んでください。本当に呆れるくらい同じことをずっと繰り返しています。強いやつがでる→規制され弱体化する→新しい強いやつがでる→以下略
規制は銀の弾丸ではない
強いカードを作りまくる。強くしすぎたら禁止する。コナミのメソッドに弱点はないように見えます。
でも実際は、規制さえすれば何をやってもいいわけではありません。規制は銀の弾丸ではありません。ユーザーからの信頼をコストにしています。
強いカードを刷ってもどうせ使えなくなるのであれば、ユーザーは学習し買い控えをします。馬鹿馬鹿しくなって引退する人もいるでしょう。
遊戯王でこれから起こること
さらなるインフレと規制が起こるでしょう。
壊れカードがでる頻度が増すと予測しています。遊戯王というコンテンツ自体、ユーザー層の高齢化で売り上げは減少しています。ビジネスとして拡大フェイズは終わり、回収期です。
インフレで現時点での必須カードも、自然にデッキから抜けていきます。
今これを書いている現在、はるうららや増殖するGは信じられないくらい必須カードですが、きっともっと強いカードが出るでしょう。歴史をみればそれは確実に実現します。
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